呼吸のように・・・

俳句のエッセー

花梨の実

花梨の木が大きく成長して、塚に傘をしていました。
塚の名は、「一笑塚」。
芭蕉の弟子のひとりです。
奥の細道で、芭蕉は一笑に逢うことを楽しみに、
倶利伽羅峠を過ぎ、金沢へ向かいました。
しかし、一笑はな亡くなったあとでした。
芭蕉は号泣しました。
そして塚の前で句会をひらき、有名な句、
「塚もうごけわが泣く声は秋の風」
を詠みました。
その句碑も一笑塚のあるお寺の境内に据えられています。
落ち松葉が濡れていて、松の匂いが境内に満ちていました。
その中で、一笑塚に供えられた花梨の実。
四つが五つに、六つに…
観光の一人一人が、落ちた花梨を手に取り、塚へ置いていっていました。
甘い匂いがしました。
秋風を冷たく感じる秋晴れの朝でした。