呼吸のように・・・

俳句のエッセー

「雉」ネット俳句 入選句(8月号より)

平成27年6月 (8月号掲載)

佐保 光俊 選

〈特選〉
廻廊に涼風とほる古刹かな   藤井 薫
 伽藍を取り巻く廻廊を歩いていると、涼しい風が吹き抜けてゆく。廻廊の内側には五重塔や金堂が見えている。寺が建立されて以来、涼風は何百年ここを吹き抜けてきたことか。作者は、その長い歴史を思っている。

袖通すことなき小紋土用干   藤井 薫 年齢的にその小紋を着ることがなくなったのかもしれないが、色も柄も大好きで大切な小紋なのだ。今年もその小紋を土用干にする。毎年のことだが、土用干のたびに、小紋を着ていた頃のことを懐かしく思い出している。

梅雨の夜の冷やかに入る注射液   白石 正彦
 継続的に注射が必要なのかもしれない。梅雨最中の今夜もまた、注射を受けているのだ。注射液が冷やかに体内に入っていくのが分かる。それは、治療への確信であるとともに、今を生きている実感でもある。

〈入選〉

サイダーの泡に悩みを閉ぢ込めて     顕子
母の日や孝を尽くさぬこと思ふ      吉岡 ユキ
代掻田澄みたる水に鷺降りて       松田 文子
干草の香り漂ふ夕べかな         西野 可代子
とうきびの一粒ごとの甘さかな      福江 真子
沙羅の花雨に打たれてなほ白く      朝倉 みゆき
風涼しすやすや眠る赤子かな       北野 喜文
サルビアの花の赤さの濃かりけり     北野 陽子
四番打者ホームラン打ち梅雨晴間     村上 正人
明易やけふ図書館に返す本        永野 昌人

以上、「雉」ネット俳句 入選句 でした。
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http://www.kijihaiku.org
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