呼吸のように・・・

俳句のエッセー

かなかな虫

蜩の別称、「かなかな虫」。
以前、蜩の鳴き声が、悪魔の笑い声に聞こえると言った
異国の人のお話をいたしましたが、
その鳴き声から「かなかな」という名前もあったのでした。
「カナカナカナカナ……」と鳴く蜩。
悪魔の笑い声という聞きなしでは、「ケケケケ…」と表現しましたが、
確かに「カナカナ」の方が近いと思います。
「かなかな虫は、天の虫」
そのように歌ったのは、室生犀星です。
カナカナは、確かに、空から聞こえてきます。
静かな宮の夏の午後、かなかな虫の鳴き声を見上げると、
そこには青空が見えます。
……
かなかなむしは天の虫
啼くとし見れば天上に
かなかなかなと寂しきものを

犀星は金沢の人。
今の私たちが見ている、
どこかしら似た景色を見ていたのかもしれません。