呼吸のように・・・

俳句のエッセー

ががんぼ

ががんぼは、蚊蜻蛉のことです。
不思議なががんぼは、障子でもなんでも、
体当たりして、くじけません。
何度も、何度も体当たりし、害はありません。
夕暮れにががんぼはやってきます。
ががんぼの前に立ちはだかるのは、芭蕉の句碑。
「あかあかと日はつれなくも秋の風」
この有名な俳句を刻んであるのは、御影石です。
この黒光している怪物の足元に、ががんぼは体を打ち付けていました。
日は沈み、明かりが山の裾に残っているころ、
句碑の袂は、暗がりになってしまいました。
ががんぼは、暗がりの句碑を離れずに飛びます。
もしや、芭蕉を慕い求めているのかもしれないと
そう思えるほどに、愛おしいががんぼの姿でした。
大きさでは勝りますが、害のないががんぼ。
夏の季語の一つです。