呼吸のように・・・

俳句のエッセー

倶利伽羅は八重桜の名所。
今は、まだ、堅い芽が立っているだけです。
そこへ、波打つように鳥が飛んできました。
四、五羽程度です。
高い枝に留まり、しきりに啄み始めます。
桜の芽がくちばしからこぼれて、地面に散りました。
赤い色が見えましたので、山雀か何かと思いましたら、
鷽でした。
丸々とした鷽が、一生懸命、桜の芽を食べています。
桜が大好物と聞いていましたが、本当でした。
飛びながら、ヒューヒューというような、優しい声で鳴いていました。
笛の音のようでした。
もっとも、私の位置からは遠いので良く聞こえませんでしたが、
近くで聞くと、もっと美しい声なのだと思います。

その声と容姿の美しさによって、古来、愛されてきた鷽。
脚を交互に上げて鳴くそうで、その姿が琴を弾くようだと、
「琴弾き鳥」とも言われます。
歳時記には、ほかに、
「鷽姫(うそひめ)」「照鷽(てりうそ)」「雨鷽(あまうそ)」などがあります。

「鷽姫」は、上述の通り、その声と容姿の美しさからの異称でしょう。
「照鷽」は、晴れの日の鷽、「雨鷽」は、雨の日の鷽、ではなく、
「照鷽」は雄の鷽、「雨鷽」は雌の鷽の俗称だそうです。
知りませんでした…
歳時記の奥の深さは、たびたび私をひやりとさせます。

今度は、鷽の鳴き声を、しっかりと聞いてみたいと思っています。