呼吸のように・・・

俳句のエッセー

吾亦紅(われもこう)

少しだけ考古学に携わっていましたので、
古いものに目がありません。
骨董品が好き、というわけではありませんが、
いいものは心が弾みます。
好みはいろいろあると思いますが、
私は、中世の青磁とか、白磁とかの輸入品が好きですね。
その頃、日本では、まだ作られていませんでした。
中国から大量に輸入されていたのですが、
さすがに景徳鎮産の出土は経験がありません。

骨董に目のない方は、怪しげな品に手を出して痛い目に遭うようで、
それでも止められないのは、そういう遺物が持つ魅力でしょう。
わかる気がします。
面白い俳句を発見しました。

贋物の越前小壺吾亦紅......佐藤尚

「20年前、買った壺」と書かれています。
贋物とわかって求められたのか、
文化財級の品の写しだったのか、
あるいは、騙されたのか…
これだけでは分かりません。
その「小壺」に、かわいらしい吾亦紅を活けてみた、というのでしょう。
しみじみと「贋物」を愛でている作者の顔を想像し、楽しくなります。
おそらく買い求めた時と同じく、
その壺は、作者にとって価値ある品に違いないのです。
吾亦紅が似合う小壺。
その出所がなんであれ、気に入った品を手元に置く、
気骨ある作者の気性を覗わせる一句ではないでしょうか。