呼吸のように・・・

俳句のエッセー

秋のほたる

たましひのたとえば秋のほたるかな   飯田 蛇笏

「龍之介の死」とあるこの俳句を、
先日、いただいた本の中に見つけました。
亡くなった龍之介の魂は、いったいどこへ行くのだろう、
そう考えたとき、秋の蛍が目についたのでしょう。
魂は蛍になって、私に会いに来てくれたかもしれない、
儚げに飛ぶ蛍を、そのように感じたのです。
「たとえば秋のほたるかな」
たとえば…「ほたる」。
また、ある時は蝶々、雀、星、風、など、
偲ぶ心は、見えなくなった彼の心を探して止まないのです。

先日の句会で、
蛍狩りをした子供のころの場面を思い浮かべるという、俳句が出されました。
隣の人が誰だったのか、もう覚えていない、
幻だったかもしれない、という句でした。

蛍とは、かつてを思い出させる何かがあるのでしょうか。
見えない何かを感じさせる、何かがあるのかもしれません。

蛍の夜、遠い記憶も、たましいも、蘇るのかもしれません。