呼吸のように・・・

俳句のエッセー

秋めく

「秋めく」は、季語です。
「秋じむ」「秋づく」と同じ仲間の意味です。
馴染みがあるようでいて、あまり使わない言葉のようにも思います。
『風俳句歳時記』には、
「なんとなく秋らしさを感ずること。
八月も終わりごろになると万象めっきり秋めいてくる。」
このように書かれています。

「万象めっきり秋めいてくる」
惹かれるフレーズですね。
しかし、秋めくというのは、微妙な感覚のように思えます。
何をもって秋めくと感じるのでしょうか。
それは、四季のある国に住んで、長い間に培われた感覚としか言いようがありません。
この日本人ならではの共通した感覚を前提に、
俳句は成り立っていると言っていいでしょう。
ですから、一切の説明を省き、
「秋めく」という言葉と客観風景を詠み込んで、十分に伝わるのです。

秋にはたくさんの具体的な季語があります。
それらを使わずに、「秋めく」を使うとしたら、
どのような場面に「秋」を感ずるのか、感性が問われます。
「秋めく」。
是非、身近な秋を探して、詠んでみようではありませんか。