呼吸のように・・・

俳句のエッセー

夜寒

夜寒、秋の季語。
日没後の寒さを感じるころ、
秋の深まりゆくことを知らされる。

  鯛の骨たたみにひらふ夜寒かな   室生 犀星

ああ、犀星は、加賀の人だった。
ひらふ」と書かれているが、これは訛であって、
正確には「ひろふ」である。
意外にも、気づいていない人が多い言葉である。

犀星もそうだったのだろう。
いや、もしかすると、あえて「ひらふ」としたかもしれない。
故郷を思う犀星が、わが言葉として、あえて選んだのかもしれないと思う。
犀星の故郷は、間違いなく金沢なのである。