呼吸のように・・・

俳句のエッセー

結葉

結葉(むすびば)。
盛んに萌える若葉。
そのように若葉が茂り、重なり合っている様子をいいます。
木下は、雨のしずくもまばらなほど、葉が生い茂り、重なり合っています。
結葉とは、それだけで人の思いを感じさせる季語ですね。
感情の入りにくい俳句の表現において、
「結葉」のような季語を使うと、それだけで某かの思いが伝わるようです。

結葉の解くるに有間の皇子哀し......長谷川かな女

もう戻ることのない運命の皇子が、
松の枝を結んで旅の無事を祈った故事に心情を重ねた一句。
結葉が解けて、皇子の願いが途切れた悲しみに思いを馳せるのでしょう。
運命の哀しさを知らない人はありません。
願いが途切れた苦しみに痛むこの胸は、
有間皇子がそうであったように、それでも歩いて行かねばならない苦しみも含みます。
そして、やはり無情にもその時は訪れるのです。
結葉が解ける…生い茂った葉の重なりに生じた、一瞬の葉の隔たりを掴んだ、
繊細な心がこの句を生んだのでしょう。