呼吸のように・・・

俳句のエッセー

桜の蘂(しべ)

桜は花が散ると、その後に蘂(しべ)が残ります。
花が散ったにも関わらず、枝に赤く花が残ったように見えるのは、蘂です。
蘂も、やがて散ってゆきます。
哀れにも、花びらが散ったように、
蘂も、また、散るのでした。
少し前には、花びらを敷き詰めたような土は、
今度は、蘂が降り重なって、地面の上を彩ります。

  桜蘂ふるヨセフてふ墓の上   山田 春生

「桜蘂降る」…この季語は、
哀愁に満ちた感覚があるのでしょう。