呼吸のように・・・

俳句のエッセー

遠雪嶺

   鉄棒の少年逆さ遠雪嶺   田島 和生

空気が澄んで、雪嶺が近くに見える御天気のいい日、少年が鉄棒をしている。
軽々と身を鉄の棒に巻きつけて、くるりと逆さになった。
少年に気を取られて、思わずこちらが逆さになったような気がする。
いや、遠くに見える雪の山々は、天地を正しく座っていた。
遠くに見える雪の峰を背景にして、少年だけが鉄棒に逆さになっていた。
少年には、すべてが逆さに見えていることだろう。
少年の見ている景色を思うと、気持ちが弾む。
春が待ち遠しい…
新鮮な空気に春を待つ思いが伝わる句である。