呼吸のように・・・

俳句のエッセー

夕靄

にわかに靄が湧きたち、
山を覆う勢いで、谷底より登り来る。
鶯が老いを啼き、その声がこだまする夕べ。
華やかな花の時を過ぎた桜に
蜘蛛が巣を張っていた。
放射線状の真ん中に、小さな蜘蛛。
谷風が蜘蛛の囲を真っ直ぐに吹き付け、
しなやかに受け止める蜘蛛の糸
蜘蛛よ。
おまえの小さな知恵は、美しい。
そして、とてもしたたかだ。