呼吸のように・・・

俳句のエッセー

錦鯉

鯉は優雅に池を泳ぎ、
石の何かに吸いついて、大きい音をさせたりする。
余りに大きい音なので、驚いて見つめても、
鯉は平気だ。
何度も何度も吸いついては、音をたてていた。

それが、ふとした人の動作に疾走する。
水を蹴散らし、稚魚を蹴散らし、
水中の猪のように、突進して行く。
しかし、それが美しい。
鯉の背の錦が水に揺れる。
稚魚が跳ねて、銀色の光が照る。

池が暮れて、辺りの色が変わっていく頃、
稚魚の中に、おたまじゃくしが混ざっている。
黒いおたまじゃくしが、銀色の稚魚の中に目立つのも、面白い。

小さな池にも、大きな世界。
生物たちの織り成す不思議は、
宇宙のように謎めいて、限りのない広さを持っているのだ。