呼吸のように・・・

俳句のエッセー

沈丁花

雪解けのころ、沈丁花の幹が裂けていることに気付きました。
雪の重みで傷んだのでしょう。
根元に近かったので、このままでは花全体に支障が出ることは必至。
丁寧にテーピングして、添え木をして保護したのは父でした。
自然の生命は強いもので、その後、
幹の裂け目はきれいにくっつきました。
春には庭いっぱいに香り、
重そうなほど花がたくさん咲きました。
その沈丁花も、今はありません。
引越しの時、移動できず、そのままになってしまったのです。
父が沈丁花を大切にしていたのは、
母が大切にしていたからです。
母の思い出を、何一つ捨てることなく、
父はその後を生き、そして母の許へ旅立ちました。

沈丁の花はもうありませんが、
花の香りは、今も心に残っています。