呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春の雪道

倶利伽羅峠。九十九折り。
車で参道入り口前を通り過ぎ、そのまま抜けようと走る。
すると、少し広くなったところからは、
除雪車の跡がなく、轍が二本つづいているだけになった。
車の通った跡があるのだから大丈夫だろう、
そう思ってそのまま突っ切ることに…

さすがに山頂は気温が低いようで、
車の底を雪がざらざら擦る。
固く締まった雪を思いながら、進むしかない道を進んで行った。
いよいよ富山方面と石川方面とに分かれる道で、
ザーっとタイヤがとられ、左へスリップしてハンドルが利かなくなった。
 あー。
仕方がない。無理をして進入したから。
冷静にスコップを持ち出し、ここから延々と雪掻きが始まった。
バックでは戻れないので、何とかUターンできるスペースを確保せねば。
雪は底の部分が融けて重くなっていた。
固く締まったところは、叩きわるようにして砕いて除けた。
青い葉っぱが一枚雪の上に落ちている。
ここは八重桜に囲まれているが、桜ではないだろう…
などと考えながらも手は動かしつづける。

もういいだろう、と車を動かして、また止まる。
車の頭の部分を除けて、バックできるように、後ろも更に除けて、
再チャレンジ。
何とか動いた。よし!
後は、前進、後進、前進、後進…を繰り返し、
ちょっとずつ、ちょっとずつ方向転換して、
ようやく来た道へ向かうことができた。
汗が髪の先から滴り落ちた。

電車みたいだ、と轍の道を右にも左にも逸れずに走る。
ようやく、除雪されたところまで戻ってきた。
 フーーー。
大事には至らないとは思ったものの、
サバイバルだったかも。

雪道は、恐い。
これからは無茶はしないように、肝に命じたのだった。