呼吸のように・・・

俳句のエッセー

背凭れの十字架

日曜日は主の日。
教会堂の二階には図書室があって、誰でも借りることができます。
2週間前に借りた本を、今日は返しに行きました。
二階へ行くと、子供が二人、
図書室で礼拝が終わるのを待っていました。
そのうちの一人に見覚えがあったので、
名前を呼んでみると、
「はい」と大声で言って、またゲームを始めました。
ちょっとお邪魔したようです。
本を棚に戻し、ノートにサインをして出てくると、
廊下に黒い長椅子が壁伝いに置いてありました。
背凭れには十字がくり貫いてあります。
かなり古いようで、角は丸くなってしまっていました。
いつの物なのか、おそらく建てなおす前からあったのでしょう。
少し歪があるものの、捨てるにはしのびない、と思ったかもしれません。
やわらかな春の日差しは、階段から奥の廊下まで通り、
椅子に届こうとして伸びてきます。
古い椅子は、数々の教会に集った先達たちを覚えているでしょうか?
くりぬいた十字架が、
春の日差しよりも暖かに感じられました。