呼吸のように・・・

俳句のエッセー

独楽(こま)

新年の季語「独楽」。
幼いころは、独楽遊びもしましたが、
ひもを使って回すのは男の子が多く、
私たちは、小さな独楽を指で回して競っていました。

ひもを丁寧に巻きつけて、鮮やかに宙へ放ち、
独楽の芯が地面に垂直に着地して、
まるで回っていないかのように真っ直ぐに地に立っている姿は、
子供でも、思わずハッと息をのむほど美しく思いました。
その時だけは、その男の子を尊敬しました。

独楽は勢いを失うと、中心をぐらりと揺らし、
やがて大きく体を振って、胴を地に付け止まりました。

独楽の、独楽として最も美しい姿を見せてくれるのは、
ほんの一時、短い時間にすぎません。
けれども、誰の心にも残る光景であり、
それを見せることができる人は、多くはない気がします。
特に大人になった今では、独楽自体を目にしなくなっています。

独楽の良さを本当に知る者とは、
小さな遊びの小さな名人たちでした。
手にしなければ分からないことはたくさんあるでしょう。
たとえ小さなことにおいても、です。
大人になっても、それらを見通す眼差しを
持ち続けたいものですね。