呼吸のように・・・

俳句のエッセー

十二月

眼鏡拭くことも忘れて十二月   福江 敏子

これは私の母の句です。
年の瀬に片づけをしていて、ふと目に止まりました。
母が亡くなって12年ですが、母の眼鏡はまだ持っています。
その眼鏡のフレームは、もともと私のものでした。
レ―シック手術を受けたので、今は眼鏡を持たない私ですが、
もとはひどい近眼で、コンタクトか分厚いレンズの眼鏡か
どちらかを着用していなければ、普通の生活ができない状態でした。

私が買い替えた時、母が喜んで持って行ったフレーム、
それがこの俳句の「眼鏡」です。

しまい込んだままでも汚れてしまう眼鏡を
時々取り出しては磨いてみたりしています。

慈しんで手元に置いていた頃もあったし、
寂しくて見たくないと思う頃もあったし、
近頃は、時々手にとって、ゆっくり思い出に浸ってみる、
そんな心境に変化してきました。

長いようで短い12年という歳月です。