呼吸のように・・・

俳句のエッセー

枯庭

木々はすっかり葉を落とし、
庭は、すっかり寂しくなってしまいました。
草も枯れ、後は、ただ、
庭石ばかりが美しく目に着きます。

公演会のあったある休日、会場となった会館の庭には、
変わった岩が、四方に配置されてありました。
その岩は、細かなこぶのような盛り上がりというか、
罅というかが入っていて、
想像を逞しくすれば、様々なものに見えてきます。

左端は、横広がりでウミガメのようにも、
うずくまったウサギのようにも見えます。
とりわけ可笑しいのは、
中央のゴリラのような岩です。
いかつい猿が、笑っているように見えました。

気になったので、会館の方に聞いたところ、
「ああ、あの猿の顔みたいな岩ですね」
と言って、特に名前も謂われもなく、
ただ面白い庭石なのだと教えてくださいました。
私は勝手に「猿石」と命名し、
枯庭を、しばらく楽しんで眺めていました。
講演会のテーマは「日本とハンガリーの出会い」で、
講師の南塚信吾先生は、猿…ではなく、
すごく素敵な先生で、これまた嬉しく眺めておりました。

人とは、とりわけ美しいものと面白いものとに
惹かれるのだと、知ったのでした。