呼吸のように・・・

俳句のエッセー

山茶花

母がまだ元気だったころのこと。
金沢の武蔵ヶ辻を歩行者天国にして露店がでるとかで、
二人で出かけていった。

母は、何にでも興味を示す方だったので、
長い列を見ると、それが何の列なのか知らなくても
列についてしまう、そんな人だった。
そこで私も一緒に並んでいると、
それは、山茶花の苗を無料で配っているところだった。
その受け渡しが不思議で、
渡す人も無言ならば、受け取る方も無言で、
黙々と手渡されては、皆方々に散っていくのだった。
一人一苗だったので、我が家には二つの苗が来た。
しかし、植える場所がなかったので、
結局、一つはお隣に差し上げてしまった。

山茶花の花の色は、白だった。
貰えるものは、何でも貰って来ようという
母の思い出の山茶花である。