呼吸のように・・・

俳句のエッセー

日除け

暫くは馬を日除けにして母子      井筒 紀久枝

井筒紀久枝さんをご存知ですか?
「大陸の花嫁」の作者でいらっしゃいます。
この俳句は、敗戦を知らされた時の、ご自身の姿を詠まれたものだそうです。

日を遮るもののない大陸で、これからの展望も何もない、
馬というささやかな影に身を置く、母と子。
「日本は勝ったのですね」
そう身を乗り出したという女性たちの一縷の希望は、絶たれたのです。
先の展望もなく、あてもなく、
確実なのは、命の保証すらないということだったかもしれません。
その母子が身を寄せた、「暫くの日除け」は、
すぐに迫りくる厳しい現実の、つかの間の空白でした。

豊かであるはずの現在においても、同じように絶望は迫ります。
私たちにとって、この句は遠い感覚のものではないでしょう。
ですが、この句の持つ凄まじさは、
簡単に理解できるものでは、決して、ありません。
私たちは、この俳句から、たくさんのメッセージを受け取ることができるでしょう。

これは、「はっぴい俳句」に紹介されていたものです。
是非、お訪ねください。

http://happyhaiku.jugem.jp/

新谷 亜紀 さんのブログです。