呼吸のように・・・

俳句のエッセー

空蝉

空蝉。

空蝉は夏の季語だが、実際、多く見られるのは、
立秋を過ぎてからという気がする。

教会の柿の木の葉に、空蝉を見つけた。
下から見つめて、葉の裏についている空蝉は、
夥しい数だった。
おおむね一つの葉に一つのようだが、
葉ごとに蝉の抜け殻がついているのは、迫力がある。

これだけの数の蝉が飛び立ったのか、と思うと、
思わず近くの木立を見上げてしまった。
蝉が目の前を過ぎて木の幹に止まった。
と思ったら、別の蝉が飛び立った。
確かに、ものすごい数だ。
もちろん、鳴きやむことはない。

空蝉は、葉をしっかりつかんで、
風が吹いても、引っ張っても取れない。

それが、雨が降って風が吹いて、しばらくすると、
一つもなくなってしまった。

気がつくと、もう風は、秋の気配を運んでいた。