呼吸のように・・・

俳句のエッセー

脚気

これが季語だとは、知らなかった。
夏に多いのだそうだ。しかし、
この飽食の時代には、脚気そのものをあまり耳にしなくなった。

脚気は、ビタミンBの欠乏症である。
日本人の主食であるお米。
その米を精白すると、このビタミンBが落とされてしまう。
であるから、ほとんど副食がなかった江戸時代は、
上級武士の病であるとか、江戸患いなどと呼ばれていた。

「強化米(きょうかまい)」というものがあるが、
こちらも最近はあまり見かけなくなった。
「強化」とは、食品に本来入っていない栄養素、もしくは、
本来含有している栄養量以上を添加させることだが、
「強化米」は、ビタミンBを添加させたお米である。

米粒の中に、黄色い粒粒が入った、その粒粒がビタミンBだ。
ビタミンBは水溶性ビタミンだから、
余りにゴシゴシお米を研ぐと無くなってしまうよ、と注意を受ける、
脚気予防の「強化」である。

さて、文学者 森 鴎外は、陸軍省医学博士 森 林太郎である。
彼はドイツで細菌学を学び、脚気は細菌による伝染病だと主張していた。
東京帝国大学 鈴木 梅太郎 教授が、ビタミンBを発見し、
脚気は食物が原因であると突き止めた後も、非を認めることは、生涯なかった。

森は、世間の非難に晒されながらも、
官僚としての立場を守り通したのである。

今も、よく知られた「官僚主義」。

官僚 森 鴎外の意外な側面である。