小さい頃、本当に小さい頃。
お風呂屋さんにいく、狭い通りに大きな石碑があって、
それが、柳の木の下にあったものだから、
怖くて、怖くて、そそくさと通り過ぎていました。
別にゆらゆら揺れる影が怖いわけではなくて、
柳にまつわる怪談を思い出して、怖かったわけです。
柳の下には、足のない幽霊が、
「うらめしや〜」と、白装束で浮かんでいる…
うらめしや〜の意味も良くわからないままに、怖がっていました。
それが、ある時、
散髪して五分刈りになった少年のように、
葉が切られていました。
その姿が滑稽で、
それまで、長々とした葉におびえていただけに、
おかしかったのでした。
あたかも勝ち誇ったような笑みだったかもしれません。
もっとも、すぐにドロドロと伸びてしまって、
私を怖がらせるようになりました。
その柳も切られて久しいのです…