呼吸のように・・・

俳句のエッセー

父の日の思い出

父は、とてもおしゃれな人でした。
ですが、若い時は、ほとんどスーツでした。
ふだん着のことは、ほとんどなく、
たまに家にいるときは、浴衣とか、Yシャツとか…

そう、長い間、浴衣を着て過ごしていた父でした。
しかし、それでも、一枚ぐらいふだん着があってもいいだろうと、
父の日にラグラン袖の麻のシャツをプレゼントしました。

日曜日は休みではなかったので、仕事を終えて夜遅く、
黄色のリボンをかけた小さな箱を持ち帰りました。

ぶっきらぼうに、
「はい」と目の前に取り出したプレゼントを見て、
父は、「ほらね」と言ったふうに、家族を見渡しました。

私の兄弟は三人。

プレゼントを用意したのは、私だけだったようでした。
末っ子の株が、ぐんと上がった「父の日」でした。

このシャツを、父は気に入って、長い間着てくれていました。

父が亡くなって三年。
様々なシーンを、思い出として、
受け止めることができるようになりつつあります。

和室にある父の帽子の中には、
まだ、煙草とライターと隠して入れてあります。