あかあかと日はつれなくも秋の風 松尾芭蕉
これは、とても有名な松尾芭蕉の句である。
先日、この句碑を山道で見た。
それは石を薄く加工して、一枚板のようにしたものだった。
しかも、少し見上げるほど大きい。
見事に切りだった、その句碑を、
尺取虫が登っていた。
尺取にとって、険しい切岸。
健気にも真っ直ぐに這い上がっていく。
そもそも、なぜ登っているのか判らないが、
小さな身体の全身を使って、伸び縮み、伸び縮みして、登っていく。
気を抜けば落下の憂き目に遭うであろう、尺取虫。
ただ、ひたすら這っていく、尺取虫。
頂上に何があるとも知らず、尺取虫。
根性のない私は、尺取虫の行く末を見ぬまま、家路についた。
尺取がどうなったかは、誰も知らない…