呼吸のように・・・

俳句のエッセー

夏風邪

大体、自分の体調というのは判るもので、
私の場合、調子が悪いと太ってくる傾向がある。

なんとなく、そう思うだけであって、根拠はない。
しかし、以前、貧血で通院していた時、
血液検査の数値がいい時は、身体が絞まってきて、
反対に太って来た時は、大概、数値が悪かった。

担当の医師は、私と年齢が近かったからか、
割に気易く質問しては、答えてもらっていた。

数値がよくなくて、鉄剤を処方されることが決まった時、
「やっぱり、そうですか」と、私。

「この間も、うつむいていて、ふっと顔を上げると、
 目の前にチラチラと水に魚が泳いでいるような、星が見えたから、
 あぁ、まだ貧血が治っていないんだわと思って…」

と説明していると、全くおかしいとばかりの笑顔で、
「それ、貧血の症状じゃないですよ」と言う。

私は驚いて、まだ他に悪いところがあるのかと思い、
「じゃ、何ですか?」と、
力いっぱい質問したところ、

「それは、おそらく、天使がその辺に…」
と言って笑っていた。

診察室で冗談を言う医者なんて初めてだったので、茫然としてしまった。
深刻な患者ではないので、先生もご気楽、ご気楽…だったのだろう。
同じ頃、胃がんの術後で消化器外科に通っていた父の診察室とは、まるで違っていた。

思いの外、長い付き合いとなってしまったため、
その先生のご家族が、カトリックのクリスチャンだと判っていたので、
同じクリスチャンの私をからかったのだろう。

笑って診察室を出たが、
結局、なぜ星が見えたのか、判らずじまいだった。
ただ、大したことはない、ということだけは理解した。

ところで、また喉の不調を感じている私だが、
いよいよ熱っぽくなってきた。
どうも流行りの風邪のようで、市販の薬は効かないらしいので、
諦めて病院へ行こうと思う。

夏風邪をひいたバカな私だった。