呼吸のように・・・

俳句のエッセー

八重桜

まだ良くなっていない目を押して、
倶利伽羅へ八重桜を見に出かけた。

慎重にそろそろと歩きながら、
まぶしい日差しを避けつつ花に接近していくと、
まだ、緑になり切っていない新しい葉に虫食いの痕を見つけることができた。
こうしてわたしが見ても、柔らかな葉は、なんだか美味しそうだ。

密集して咲いている花が、目の前で揺れているので、
つい手に触れてしまった。
ほのかな香りがした。
まだ蕾もあって、まるで実のような濃い色の蕾は、
風にふらふらと揺れて、開く時を待っているようだ。

枝を手にして、まじまじと観察が過ぎると、
桜泥棒と疑われそうで、注意して見て回る。

お花見の人たちが多いと言っても、都会のそれとは比較にならない。
桜の一本一本をゆっくりと見ていられるのは、とても豊かな時間と思う。

目が疲れて、長くは居られなかった。
でも、八重桜の見ごろは、まだまだ続くので、
もう一度くらいは、出かけられそうだと思っている。