我が家にある三彩馬は、唐三彩の写しだが、
似ても似つかぬ30cmほどの小ささである。
父が知り合いの方の遺品を買い取ったもので、
本人は、高価なものだと信じていた。
しかし、なんとなく、そうではないかもしれないと感じていたかもしれない。
それでも、そこそこの値段で購入したため、
某かの価値をその馬に見出さねばならないと思ってか、
よく馬の顔を褒めていた。
笑っているみたいだろ…
実に楽しそうな顔をしている…
と一人で訴えていた。
母は、掃除をしながら、
それほど価値があるなら、いつか売りとばしてやる…
と、心のどこかで思っていたらしい。
結局、売られもせずに、今も床の間にあるその三彩馬は、
いつも左向きに窓を見ている。
時々、正面を向け、歯をむき出しにした顔をまじまじと眺めると、
確かに笑っているように見える。
父を思い出して、なんだかおかしくなり、ふと笑ったら、
窓の外には、山が笑っていた。
おかしくて、泣きそうになった…