呼吸のように・・・

俳句のエッセー

三光鳥

ホトトギスの鳴き声を聞いたことがない、という人がいた。

そんなはずはない。知らないだけだろう、と言って、
「テッペンカケタカ」とか
「トッキョキョカキョク」と
鳴くのだと真似をすると、すぐに分かってくれた。

この便利な「聞き做し」は、他にも色々ある。

葭切(ヨシキリ)は、ギョギョシ、ギョギョシと鳴くので、
行々子という異名がある。
これは夏の川岸に聴いて、すぐに分かった。

分からなかったのが、三光鳥(サンコウチョウ)である。
「ツキヒーホシ(月日星)、ホイホイホイ」と鳴くので、この名があるとか。
しかし、
これは、何度聴いても、
「キーキーキィー、クィクィクィ」としか聴こえなかった。

最初の「ツキヒーホシ」も無理があるように思うが、
最後の「クィクィクィ」を「ホイホイホイ」と聴いてしまうのは、
古典的で面白いと思ってしまう。

この三光鳥の鳴き声を、意外なところで聴いていた。

それは、越後湯沢のホームである。
北陸から東京へ向かうのに、越後湯沢で新幹線に乗り換える。
その在来線のホームに三光鳥が鳴いているのだ。
正確には、流れているのである。

三光鳥を知らなければ、ただの鳥の鳴き声でしかない。

三光鳥と知ってより、なぜ三光鳥なのか知りたくなったが、
まだ聞くチャンスがない。

そういえば、
What time is it now? を、

「掘った芋、いじったな」と聞いてしまうのも、
聞き做しの一つと言えるかもしれない。

日本人の耳の不思議さである。