世の中には、黒い椿というものがあるらしい。
よく聞けば、真っ黒な椿ではなくて、
深い赤が黒っぽく見えるのだそうだ。
まだ、見たことがないので案内していただいた。
そこには何本か椿があり、その中に黒椿もあるという話だ。
しかし、椿は、まだどれも蕾で、
緑色のかたい蕾では、どれが黒椿かはわからない。
こじ開けてまで見ようか、という勢いだったが、さすがにそれは断念した。
曇り空を無理に出かけて行った私たちだったが、
いよいよ雨が降りだし、仕方なく車に戻った。
ふと、気がつくと、
案内人の彼女の手に、先ほどの蕾の枝があった。
「取って来てしまった。」
なんということを…
「駄目かなぁ。」
駄目だろう、ここは、県民公園なのだ。
口先ばかりで聞く耳持たず。
悪びれもせず笑っている。
調べてみると、黒椿の花言葉は、
「気取らない優美さ」なのだそうだ。
黒椿のような彼女は、
まったくもって、手が早かった!