この近所でも、一時期、野良猫が増えて困ったことがあった。
花壇や畑に被害が出て、ついに町内会が動き出し、
餌を与えてはいけないと、厳重注意の回覧まで出されたが、
可愛がっている人たちには、馬耳東風、馬の耳に念仏だった。
実は、私も、「念仏を聞かされた馬」の一人で、
カギ尻尾の虎柄に「コラ」と、名前まで付けて可愛がっていた。
この名前は、おいたばかりをするこの猫を、
「こら!」と叱りつけているうちに、名前になってしまったものだ。
そのコラが、四匹の仔猫を生んだ。
コラは、そのまま庭の躑躅の根に住み着き、子育てを始めてしまった。
動物が苦手の母は、ひっきりなしに文句を言ったが、
私はとても可愛がっていた。
リボンをつけたり、写真を撮ったり、毎日大変だった。
ある日、
帰宅すると、母が、ギャンギャンギャンギャン大騒ぎしていて、止まらない。
どうしたのか聞くものの、一方的に責め立てて話にならないのだ。
とにかく、庭に出てみろというので、
掃き出されるようにして、庭に出て見ると、
躑躅の下に置いてあった餌用のお皿に、黒いネズミが一匹横たわっていた。
コラは子どもたちに、
ネズミは食べ物だと教えようとしたのだ。
なんと教育熱心なママ猫なのだろうか。
コラは、全然「こら!」ではなかった。
私はコラの知恵に感動した!
が、母はショックで半狂乱になり、
しばらくはまともに口をきいてくれなかった。
お皿のネズミは、というと、
いつの間にか姿がなくなっていた。
コラの教育が成功したかどうかは、
確認できないままだった。