呼吸のように・・・

俳句のエッセー

躑躅(つつじ)

この近所でも、一時期、野良猫が増えて困ったことがあった。

花壇や畑に被害が出て、ついに町内会が動き出し、
餌を与えてはいけないと、厳重注意の回覧まで出されたが、
可愛がっている人たちには、馬耳東風、馬の耳に念仏だった。

実は、私も、「念仏を聞かされた馬」の一人で、
カギ尻尾の虎柄に「コラ」と、名前まで付けて可愛がっていた。

この名前は、おいたばかりをするこの猫を、
「こら!」と叱りつけているうちに、名前になってしまったものだ。

そのコラが、四匹の仔猫を生んだ。

コラは、そのまま庭の躑躅の根に住み着き、子育てを始めてしまった。
動物が苦手の母は、ひっきりなしに文句を言ったが、
私はとても可愛がっていた。
リボンをつけたり、写真を撮ったり、毎日大変だった。

ある日、
帰宅すると、母が、ギャンギャンギャンギャン大騒ぎしていて、止まらない。
どうしたのか聞くものの、一方的に責め立てて話にならないのだ。
とにかく、庭に出てみろというので、
掃き出されるようにして、庭に出て見ると、
躑躅の下に置いてあった餌用のお皿に、黒いネズミが一匹横たわっていた。

コラは子どもたちに、
ネズミは食べ物だと教えようとしたのだ。

なんと教育熱心なママ猫なのだろうか。

コラは、全然「こら!」ではなかった。
私はコラの知恵に感動した!
が、母はショックで半狂乱になり、
しばらくはまともに口をきいてくれなかった。

お皿のネズミは、というと、
いつの間にか姿がなくなっていた。

コラの教育が成功したかどうかは、
確認できないままだった。