呼吸のように・・・

俳句のエッセー

うかれ猫

春の雪は、淡く儚いものであるが、思わず大雪になることもある。

ここしばらく、そのような雪の日が続いた。

見ると、まっさらな雪の面に、
小さな丸っこい足跡が、家から家へと続いていた。

猫だ。

猫と言えば、寒さに弱く、「こたつで丸くなる」イメージだが、
最近の野良猫は、たくましい。
雪の上でも平気で歩いている。

夜更けに、喉の奥から、切なげな声を絞り出して歩き回る、恋猫。

にあぁ〜お、にあぁ〜お、と近づいては、去っていく。

雄猫に遭遇すると、お互いを敵とみなし、
チャッ、チャッ、という舌うちをしつつ、
ぅにゃ〜おうぅぅ、と唸り合い、ついに
フギャーッ!という叫びとともに、ガサッ、ドサッと
ぶつかり合うような音がして、静かになる。

深夜、眠りに落ちたころ、恋猫同士の戦いが始まってしまったら、
ただただ、忍の一字で、果てるのを待つしかない。

戦いが長引いて、痺れを切らし、追い払うこともある。

人間の恋の悩みなどお構いなしに、
浮かれまわる猫たちに、節制を説いたところで、
…無駄である。