呼吸のように・・・

俳句のエッセー

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

春光

お見舞いに行ってきました。 お顔を見るまで、心配だったのですが、 お元気でした。安心しました。 歩行器で、長い廊下を往復したり、自転車こぎをしたり、 足を上げる運動、肩を回す運動… 96歳のリハビリは、1時間続きました。 素晴らしいです。 この姿を見…

金縷梅

金縷梅の咲くや薬鑵の笛高し 田島 和生 金縷梅の咲くころ、なんとなくもやもやした思いがします。 春の訪れは、別れであり、出会いであり、 希望であり、不安であるという、 定まらない思いを抱く季節だからと言えるかもしれません。 春は霞。 夜は、朧。 い…

細見綾子集

『細見綾子集』 今日、届きました。 300句が収められ、すべてに短い脚註が書かれています。 まだ、読みはじめですが、 いろいろな見方があることがわかり面白いです。 脚注には、細見先生の自註に触れているものもあり、 知らなかった身辺のことなど分かって…

畑打つ

数年前に、市中を流れる大川に新しい橋が架けられ、 麦畑や民家の小さな畑の中を、大橋が渡るという景色になりました。 便利にはなりましたが、景観を損ねたかもしれません。 その大橋のたもとに、石碑が建てられています。 かつては畑の真ん中にあったもの…

獅子独活(ししうど)

獅子独活の白々ひらく地震の崖 田島 和生あれは、前回の金沢での同人総会のあと、 2014年の5月、能登へ吟行に出かけました。 バス1台に乗り込んだ私たち二十余名は、奥能登へ向かいます。 途中、山藤が見られ、崖は一面の白い花が見られました。 何度も、そ…

金子兜太先生を悼む

水脈の果炎天の墓碑を置きて去る 兜太 金子兜太先生が、2月20日に天に召されました。 兜太先生の俳句は、正直なところ、よく分からないと思っていました。 ただ、上記の俳句は、戦争経験から作られたことがすぐに伝わり、 強く心に迫って来た一句でした。 ト…

春の水

桜肉食つて跳んだり春の水 田島 和生 桜肉を召し上がったそうです。 可愛そうな気もしますが、美味しかったのでしょうね。 お陰で、かなり馬力がついた様子です。 春の水の季語が、ようやく活動できる喜びが感じられ、 桜肉と合っています。 しかし、かわい…

あたたかし

手のひらへ巫女より御籤あたたかし 田島 和生 さて、からからと筒を振って得たおみくじの番号を伝え、 巫女さんよりおみくじそのものを手渡ししてもらいました。 手が触れて、その手があたたかかったというのではなく、 おみくじがあたたかだった、と言いま…

山笑ふ

おみくじの木筒からから山笑ふ 田島 和生おみくじを引く。 多くは、小さく折りたたんだ短冊状のものを、 直接手に取るのですが、中には、 八角形の筒状のものをカラカラと振り、 中に納めてある棒に、何の何、と番号が書かれていて、 その番号の御籤を別に戴…

明王の眼玉

明王の眼玉ぴかり春の闇 田島 和生明王というと、私は、倶利伽羅の不動明王を思い浮かべます。 このように霊験あらたかな古い仏像等は、煤けて色は落ちてしまい、 目ばかりがぎょろりと目立つ、そのような面持ちではないでしょうか。 「眼玉ぴかり」と面白く…

文豪の町

漱石の愁ひ顔なる遅春かな 田島 和生こちらは、東京都新宿区にある、「夏目通り」でしょう。 文豪、夏目漱石の生家があることから、こう名付けられたようです。 夏目漱石の顔というと、凛とした鬚に、なかなかの美男で、 よくお目にするのは、右手で頭を支え…

夏目坂

白梅の光ちりばめ夏目坂 田島 和生白梅が、春の日差しをキラキラとまとっています。 もしかしたら、雨後の水滴かもしれません。 こちらは、「夏目坂」とあるので、夏目通りの一角でしょうか。 私は、夏目通りを知りませんので、分かりませんが、 白梅が所々…

無言館2

パレットに乾びし朱色春浅き 田島 和生こちらの季語は「春浅き」。 自画像の句と比べて、若干、暖かさを感じさせる句です。 パレットに乾ききっている朱の色は、 もちろん、もう使われることはありません。 その朱色の持ち主は、もう帰ってはきません。 それ…

無言館

自画像の眼に見返され冴返る 田島 和生「信州・戦没画学生美術館」と前書されています。 正式には 「戦没画学生慰霊美術館 無言館」 その中に、自画像があったのでしょう。 つまり、戦地へ赴いた本人の顔です。 その自画像の眼は、おそらく強い印象だったの…