呼吸のように・・・

俳句のエッセー

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

時雨虹

野に立てば身を包みゆく時雨虹 田島 和生 野に出て行き、たたずんでいたところ、時雨がきました。 するとたちまち虹が立ち、この身を包んでいきました。 ロマンチックな出来事です。 見上げても美しい虹に包まれて、何を思ったのでしょう。 時雨の虹は、雨が…

被爆地を掘る

あかあかと被爆地を掘る寒さかな 田島 和生広島の記念館工事のためでしょう。 発掘調査をしていました。 それほど深くないところに、かつての住居跡が確認できました。 かつて、と言いましても、70年前。 古い話ではありません。 原爆に散った町の痕跡を、明…

蜃気楼

魚津よりとどく写真の蜃気楼 滝沢 伊代次富山湾の蜃気楼はよく知られています。 蜃気楼の映像は、よくニュースになります。 テレビや新聞に取り上げられますが、実際に目にすることは難しいでしょう。 掲句は、その蜃気楼の写真が送られてきた場面です。 旅…

卵立つ

立春の卵立てりと児ら叫ぶ 泊 康夫コロンブスの卵を思いだします。 これは、子供たちが、立春に卵が立つという話を聞き、実験したのでしょう。 子供らしい好奇心から、何度も何度も挑戦しているうち、 ついに卵が直立したのだと叫んでいるようです。 子供た…

イースター

今日はイースター。 復活祭でした。 金曜日に十字架にお架かりになった主イエスは、 日曜日の朝、ご復活されました。 私たちも、同じように、いつか蘇りの日に復活し、 主イエスとともに、父なる神様とともに 天の国に入ります。 名前を呼ばれ、目を覚ましま…

さようなら、修先生

今日は、お別れに行ってきました。 よくしていただいた、宮崎修先生が、天に召されました。 かつて、俳句の本をたくさんいただきました。 中には、もう手に入らないものもあり、 感謝して、大切にしております。 その時から、今日まで、お目にかかることはあ…

十字架

十字架にかけられた主イエス。 今日は、お亡くなりになった日です。 寒い日になりました。 夜には雪もちらつきました。 悲しい夜です… 私たちは、いとも簡単に人を憎み、それが高じて死に追いやります。 それを罪といいますが、意識しないことかもしれません…

最後の晩餐

今日は、「最後の晩餐」が行われた日です。 主イエスが、パンとブドウ酒をとり、 これは私の肉、私の血・・・と言って、弟子たちに分けられた、その日です。 その後、ゲッセマネで捕らえられ、裁判にかけられ、 明日、十字架刑に処せられます。 一切れの小さ…

落椿

滝の上(へ)に一つは懸かり落椿 田島 和生滝の水は、とぎれなく落ちてきます。 ゆっくりと流れてきた水が、急激に落ちて来る落差の不思議を 飽きずに眺めています。 平坦な水が、怒涛の変化をするその所に、 椿の花が、引っかかっています。 赤い花と想像し…

金縷梅

金縷梅の咲くや薬鑵の笛高し 田島 和生金縷梅の花は、細いリボンをくしゃくしゃにしたような花びらで、 咲き満ちても、ぼんやりとした印象の花です。 黄色のくしゃくしゃした花は、 朧な春の景色に溶け込んで、はっきりとしません。 庭の金縷梅でしょうか。 …

芭蕉の杖

くねくねと芭蕉の杖のうららけし 田島 和生義仲寺。 芭蕉の杖を初めて目にして、 こんなに繊細な杖だったのだと、驚いたことを覚えています。 寺の入り口の傍の建物に展示されている杖は、 芭蕉の名声に反して、些細なもののように感じたのです。 平たく申し…

薬喰

薬喰は、冬の季語ですが、 昨日、薬喰をいたしました。 イノシシの肉は、初めてでした。 私は脂が苦手ですが、一口にたいそう旨味があり、おいしい!と思いました。 脂肪のコリコロ感が特徴だそうですが、 まさしくコリコリしており、説明の通りだったことが…

草餅

草餅や娶らず征きし兵の墓 山 信夫 草餅をお供えしてある、兵士の墓。 若くして出兵し、帰ってくることはありませんでした。 あれから幾年も経て、未だに草餅を供えてくれる家族がいるのでしょう。 好物だったのか、供えられた草餅に思いがこもります。 「娶…

桐の花

山空のいちばん近き桐の花 田島 和生 石川県白山市での一句だとのことです。 桐の花は、空に向かって咲きます。 高くに咲く桐の花は、青空を差して、 高貴に、清楚に、一途に咲いていたのでしょう。 「青空のいちばん近き」桐の花は、 その写生に、すべてが…

春泥

春泥を歩く汽笛の鳴る方へ 細見 綾子 思えば、春泥も珍しくなりました。 特に、土のない都会では、春泥もありません。 春泥とは、春の雨や雪解けによって、 土がぬかるむことをいいます。 細見綾子の時代、汽笛の鳴る方、すなわち駅へ、 春泥を歩いて行った…

春まつり

後添ひの話が禰宜に春まつり 泊 康夫 春祭りには、禰宜が氏子の家々を回り、お祓いをします。 その禰宜に後添いの話が決まったと、噂しているのでしょう。 あるいは、精悍な禰宜を見初めた方があったのでしょうか。 春祭りに、まさしく春がやってきた、禰宜…

牧開き

散居村一望にして牧開き 泊 康夫 これは、稲葉山牧場でしょう。 365メートルの小さい山の頂に牧場があり、 牛がのんびりと過ごしています。 頂上からは、ふもとの散居村が一望でき、 立山連峰は、背にそびえています。 牛たちは、斜面の黒点となり、 ある時…

震災忌

震災忌は、長く9月1日のことを言いました。 しかし、近年は、阪神淡路大震災も加わり、 そして、東日本大震災も忘れることはできない災害として、 震災忌に加えられたと言っていいと思います。 あまりに近い出来事であるだけに、 様々な季語によって表現さ…

余寒

看護婦の辞表預かる余寒かな 泊 康夫寒さの残る季節。 年度末を迎えました。 人が動く季節です。 病院長でいらした泊先生が、看護婦の辞表を預かったというのです。 「余寒」という季語から、残念な思いがわかります。 目をかけていた方だったかもしれません…

淡雪

気持ちのいい陽気が続いたと思えば、 また、雪になりそうです。 こうして、暖かさと寒さが交錯しつつ、 少しずつ、少しずつ、春らしくなってゆきます。 春の雪は、淡雪。 暖かさを思わせる雪です。 淡雪を被る老犬目を病めり 小室 登美子 犬はもともと目が良…

受難

日曜日は主の日。 礼拝で語られるお話は、神様からのメッセージ。 私の姿を映し出す鏡です。 自分の心の姿は、美しいとは、決していうことのできないものです。 しかし、主イエスの十字架によって、 そのことも許されているのですね。 許された幸いを、あり…

孕み猫

孕み猫からだをすぼめ垣くぐる 泊 康夫句集『麦星』より。 泊先生は、細やかな心の持ち主でいらして、 気づかいを忘れられませんでした。 また、威厳のある方で、やすやすと近づけない雰囲気を、 同時に持っていらっしゃいました。 その先生の句集をお読みす…

うららか

うららかやほうやほうやの長電話 泊 康夫 句集『麦星』より。 リズム良く、「や」を使い、ひらがなで上五中七をまとめたのは、 うららかさを表現する手法だと思いました。 春のあたたかな雰囲気が詠まれています。 電話をしているのは、作者本人であるかもし…

啓蟄

居るかいと母啓蟄の裏戸より 泊 康夫 句集「麦星」より。 林徹先生と同じ医者でいらした泊先生は、 徹先生を追うように、同じ年の十月に天に召されました。 泊先生は、七尾市中島町のご出身です。 私の住むところもそうでしたが、 田舎では鍵をかける習慣が…

受験

受験子に出立の朝切火かな 青木 和枝 青木和枝『白山茶花』より。 受験の季節です。 私立は、ほとんど終わっているかと思いますが、 国立大学はこれからです。 受験生の方々には、実力を十分に出し切ってほしいと祈ります。 掲句は、受験の朝、子供へ切火を…

岩牡蠣

岩牡蠣の岩に息づく忘れ潮 和生 牡蠣貝は、岩から「掻き」捕ることから、この名がついたと言われています。 岩牡蠣は沿岸の岩場に生息しており、 海水からプランクトンなどを摂って生きています。 干潮時は海水がないので、餌をとることはできませんが、 か…