呼吸のように・・・

俳句のエッセー

空蝉

泥の目の空蝉二つ僧の墓  和生

 

空蝉の爪は鋭く、ちょっとやそっとでは離せません。

羽化した時そのままに、木の葉や幹を掴んでいます。

その空蝉が、僧の墓を掴んでいました。

墓とは石のことです。

石を掴んで離れない空蝉は、

どれだけの時を、ここに過ごしているのでしょうか。

泥の目によって、それは表れています。

雨がやって来て、水しぶきが泥を跳ね、

また、太陽が照り付け、その泥が渇いても、

空蝉は墓を掴んだまま、じっとしていたのでしょう。

空蝉にも時の経過があります。

そして、短い蝉の命を思ったのではなかったでしょうか。

空蝉は二つ、仲良く僧の墓を離れません。

命のない空蝉は、やがて墓を零れてしまうでしょう。

それが何時なのかは、誰にも分かりません。