呼吸のように・・・

俳句のエッセー

苔の花

一の宮苔の花咲く力石   和生

 

一の宮」という響きが、この場面を揺るぎないものにしています。

一の宮とは、その地域において、もっとも格式の高い宮をいいます。

かつて、日本最古の地図、東大寺の地図では、

「神地」とのみ記されていた、いわゆる「神の宮」に

建物が出現したのは、中世のことです。

政治的な意図があったとされています。

ともかくも、それまで夜、山野を移動し、目に見えず、

お祭りの日だけに来臨していた神に、定住の地が与えられたのです。

その一の宮

かつての「まつりごと」とむずび付き、

「格式」という呼び名で、現在もその品位を保っています。

その一の宮の力石に、苔の花が咲いていました。

「苔の生すまで」示しています。

力石も、今ではかつての男たちの夢の象徴として

お宮に祀られているだけです。

しかし、それらすべてが、現在に至る歴史であり、

苔の花へ集約される時の遺物です。

雅で厳かで、希望を感じる一句です。