呼吸のように・・・

俳句のエッセー

おち鳴けばこちの応ふる雉かな   田島 和生

(おちなけば こちのこたふる きぎすかな)

 

 早朝、河原などへ出掛けると、雉の鋭い声に出会うことがある。

春はさまざまな鳥の声を耳にするが、雉が別格と思えるのは、

その珍しい声と、今では稀少となってしまったその存在にある。

 雉の雄は、繁殖期には雌を求めて鳴き、ドラミングをする。

その姿が、素っ気ない風体に見えたのだろう。

けんもほろろ」の語源となった。

しかし、雄は良き伴侶を求めて鳴いているのである。

 

 この句は、遠くの雉が鳴けば、近くの雉が応えたと言っている。

が、雌の鳴き声は雄とは違うので、

これは縄張りを守る雄同士が鳴く、求愛の響きだったかもしれない。


 静かな朝、遠くから雉の声が微かに聴こえた。

足を止め、耳を澄ますと、

今度は近くに、はっきりと鳴いた。

雉と出会った幸運と感動に、この一句が生まれたのである。

 

    (「雉」誌 5月号掲載)