呼吸のように・・・

俳句のエッセー

讃美歌

「星も見えない 暗い夜を」

クリスマスのコンサートで歌われている讃美歌の歌詞です。

この歌を歌うたび、目の見えなくなった老人を思い出し、

悲しくなります。

病床で、耳も遠くなり、

もともと片方の目がほとんど見えていなかったのが、

見えていた方の目も見えなくなり、

昼間に訪ねても、

「今、何時ですか」

「3時です」

「夜中のですか」

このような会話から始まりました。

星が見えない夜とは、暗い夜だけではなく、

目の見えない人のことでもあると思いました。

その耳元で、讃美歌を歌いました。

「讃美歌が……」

そう言って頭を動かされました。

聴こえているのです。

私は歌いました。

約2時間、歌い続けました。

治療の邪魔になったでしょうか。

行き過ぎたお見舞いだったでしょうか。

身内でもないのに、長居しては迷惑だったでしょうか。

私はそうは思いませんでしたが、

そのような指摘も受けました。

現実を知らないのだと思いました。

讃美歌を歌いましょう。

死の床のあっても、試練のときにあっても、

歓びのときにあっても、讃美歌を歌いましょう。

歌えない人には、歌って差し上げましょう。

それは、私の喜びでもあるからです。