呼吸のように・・・

俳句のエッセー

父の立ち母坐す遺影夏座敷

父の立ち母坐す遺影夏座敷   田島 和生

 

このお写真は、

お父様とお母様が、一枚に映っているのでしょう。

若い頃、京都へ旅をしたとき、

このようなご夫婦をお見掛けしました。

門前で、お一人が立ち、お一人が座って、ポーズをとっておられました。

タクシーの運転手が、

あのスタイルは、古臭い・・・というようなことを言いました。

明治の写真のようだというのです。

この俳句をお読みして、その時のことを思い浮かべました。

古い写真なのだと分かりました。

恐らくは、作者本人よりも、若い両親の姿ではなかったでしょうか。

初々しいご夫婦の写真を、夏座敷の解放された空間に眺めています。

もう、遠い記憶です。

開け放たれた座敷の風が、爽やかさを運んでくる一方で、

だからこそ、むしろ思うことがあります。

あなた方の人生は、何だったのでしょうか。

けれども、人は、そのような思いを超えて、

生きようとし、生き続けるものではないかと思います。

両親の古い写真は、夏座敷という明るい季語によって、

むしろ、郷愁を誘います。

座敷に吹く風に、人の気配を感じるような俳句です。