呼吸のように・・・

俳句のエッセー

ひやひやと

ひやひやと湖へ火色の夜明雲   田島 和生
季語は「ひやひや」。秋。
秋の空気を表す季語は、たくさんあります。
それほど、秋らしさを思わせるものだと言えるでしょう。
そして、それら一つ一つに微妙な違いがあり、
俳句の雰囲気を決定するので、慎重に季語を選ぶ必要があります。
掲句は「ひやひや」を用いました。
時間は「夜明け」です。
私は日本海側に住んでいますので、朝日は海から昇りません。
初めて琵琶湖から昇る朝日を見たときは、
その眩しさ、美しさに感激しました。
秋の空気が澄むころ、夜明けに感じる冷やかさとは、
晩秋のそれとは違い、また、初秋の爽やかさとも違い、
本格的な秋の訪れを感じたのではないでしょうか。
「湖へ」たなびく、まぶしい雲は、「火の色」でした。
夏の眩しさとは、また趣を異にした、
「火色」の雲とは、どのような雲だったでしょうか。
目に鮮やかな風景と、肌で感じる空気とを
見事に言い表した一句でしょう。