呼吸のように・・・

俳句のエッセー

立冬

暦のうえでは冬となりました。
だんだんと寒さが増してゆきます。
日も短くなり、北国では、日差しが貴重です。
だからでしょうか。
日差しの中の草木は、より一層、凛として見えます。
不思議なことですが、恵まれたときよりも
満たされない何かや、特別な試練の中にある時の方が、
人は輝いて見える気がします。
美しく、凛としたある女性を思い出します。
出会ったとき、彼女は、大きな試練の中にありました。
特に気負うでもなく、また、落ち込むでもなく、
しかし、静かな輝きを放っていたことを思い出します。
美しさとは、限界と隣り合わせの、ぎりぎりのところにあるのかもしれません。
まさに冬に生える草木のように、凛として、輝いていました。

  立冬のことに草木のかがやける   沢木 欣一