呼吸のように・・・

俳句のエッセー

精霊蜻蛉

  水匂ふ背戸の精霊とんぼかな   田島 和生

「精霊とんぼ」とは、盂蘭盆のころに現れる蜻蛉のことだそうで、
多くは、ウズバキトンボを言うそうです。
「背戸」という言葉が好きでした。とても合っていると思います。
幼い頃、私も「背戸」と教わり、話していました。
裏庭とか、そんなことは言わず、ただ「背戸」と言っていました。
背戸の向こうに川があるのでしょう。
何となく涼しさを感じる頃になり、水にも、
ふと秋らしさが感じられたのでしょうか。
水の匂いがしたと言います。
精霊蜻蛉が、秋を告げるかのように、
水辺の日差しに、日を返しながら飛んでいたのかもしれません。
どことなく懐かしい風景を思います。
幼いころ母に抱かれた時のような、温かさを感じさせる一句です。