呼吸のように・・・

俳句のエッセー

おたまじゃくし

  ぬばたまの蝌蚪散りまどふ泥けむり   田島 和生

「ぬばたま」とは、黒く小さなものとしての譬えでしょう。
蝌蚪、オタマジャクシをイメージして、
そのように表現されました。
おたまじゃくしが育つころ、田に水が張られるころ、
黒っぽい土かと思って見ていると、ふとした何かに、
パッと土が水に散り、一気に広がり、あっという間にいなくなってしまいました。
残されたのは、水の底から立ち上る、土色の土。
その時、初めて思うのです。
あの黒い土と思ったのは、全て、おたまじゃくしだったのだと。
それほどたくさんのおたまじゃくしが、散りまどい、
泥けむりを立てている様子を詠みあげました。
単純なようでいて、表現しにくい景色ではあるでしょう。
泥けむりを立てて、一瞬で消えてしまった蝌蚪の群れ。
後に呆然と立ち尽くす作者が見えるようです。