呼吸のように・・・

俳句のエッセー

雲の峰

珈琲の氷嚙み割る雲の峰   田島 和生

終戦日を迎えました。
ある方は、敗戦日と言っておられます。
どちらも正しいのでしょう。しかし、意味するところは違うようです。
戦後の混乱期を、映像などで知ることができますが、
実際のところは、はかり知ることはできないと思っています。
肌に感じる暑さ、寒さ、冷たさ、痛さ…
そして、生活の匂い、敗戦の匂い、知ることはできません。
逞しくも、戦後、復興に向けて、人々は活動を始めます。
バラック珈琲店があったと聞きました。
高価には違いないでしょう。しかし、
心に与える栄養は、どれほどであったか。
その糧を求めて、人は集ったに違いありません。
平和になって久しい現代。
アイスコーヒーを飲み干して、口の中に入った氷を
カリカリと噛んでいる、普通の生活を詠います。
しかし、今日だけは、特別な思いで捉えます。
平和が当たり前ではなかった時代、
そんな日は、二度と訪れないようにしなければなりません。
湧きおこる雲の峰のように、平和への思いを抱かせる
一句となりました。