呼吸のように・・・

俳句のエッセー

緑雨

朝から雨の匂いがしていましたが、
午後は、ほつりほつり、ためらうような雨になりました。
一気に降ってくれればいいものを、蒸し暑さが抜けないまま、
午後の教会に集いました。
K長老の戦争体験の記録会は、これで3回目。
終戦から収容所での生活、そして、受洗に至る経緯を伺いました。
終戦を迎え、収容所での生活は、
グリンピースの缶詰の支給から始まりました。
ルソン山中に潜伏する6か月の間、
蛇、蝸牛の他は、草ばかり食べていましたので、
美味しかった…率直な思いでした。
その後、与えられたお弁当は、毎回、メニューが変わり、
コーヒーがあり、たばこも3本ついていました。
医者であったK長老は、看護婦に化粧品まで用意されていたことに驚きます。
そして、時間を持て余しているある日、
一つの天幕に「キリスト教集会」という文字を発見します。
天幕には5〜6名が座し、その中の1人が語りました。
今でも忘れない…
一杯のお茶を、ふっと動かし、
力を加えればカップは動きつづけ、そのままにしておけばカップは止まり続ける。
「銀河系には、地球が、他の惑星が規則正しく動いている。
 ぶつかることなく動き続けているが、それらを動かした最初がある。
 それが、神である。」
そして、
「その神が地上へきてくださった。それがクリスマスだ」
その言葉が胸に残り、10年後、教会の門を叩くことになりました。
更に、30年後、教会の長老となり、東京から講演にS牧師を招いたとき、
ルソンの収容所で、キリスト教集会を開いたのは、その人だと知ったのです。
神の御手に導かれた再会でした。
新緑に囲まれた教会の2階で、静かな雨を眺めつつ、
恵みの時は、2時間余りに及びました。