永き日

  永き日の光ふくらみ点滴す   田島 和生
正岡子規は、病床において数々の名作を残しました。
一度、田島先生は、そんな子規のことを称えつつ、
「病気になっても、甘えてはいられない」というようなことを
仰った記憶があります。
自分で起き上がることもできなかった子規の俳句は、
吟行へ行かねば、身の回りには変化がない、と口々に言う
私たちを戒めているかのようです。
その子規にせまる一句。
点滴の液が落ちて来るのを、仰臥して眺めている作者は、
その点滴液に日がとどまっていることを発見しました。
随分、日も永くなったものだと思いつつ、
ゆっくりと膨らんでは落ちてくる点滴の液を、ただ眺めていたのでしょう。
「永き日の光ふくらみ」という明るい景色の写生が生き、
陰鬱になりすぎず、むしろ、病という題材を強く印象付ける俳句に仕上げています。
病床での緊張感が生み出した、素晴らしい一句でしょう。