アカシアの花

  アカシアの花の見えゐる手術室   小室 登美子

16年間、手術室の婦長をなさっていた小室さん。
手術室の看護婦になるのが夢で、看護学校へ入学なさったそうです。
今月、14日に天に召された小室さん。
余命を告げられた時、お孫さんが無邪気に尋ねたそうです。
「人生で一番うれしかったことは、なに?」
小室さんは、
看護学校へ入ったとき。それが一番うれしかった」
そう、答えました。
憧れの看護婦を目指しての入学。
そして、看護婦として働いて、出会った伴侶。
三人の子供たち。
すべて、人生の幸は、この看護学校の入学から始まりました。
気丈にも、死を告げられてから、句集の出版を決められました。
装丁も決めて、しかし、完成を見ることなく、旅立たれました。
アカシアの花の見える手術室。
万感の思いを込めての一句だったに違いないでしょう。