呼吸のように・・・

俳句のエッセー

冬椿

  天辺は高嶺の見ゆる冬椿   田島 和生

WEP俳句通信、「近江逍遥」16句。
「雉」主宰 田島和生先生の作品を鑑賞しています。
今日は、16句目の作品です。
冬の椿が、おそらく赤々と咲いているのでしょう。
椿は、意外にも、わりと大きな木になります。
掲句の椿も、仰ぐほどの大きさだったように思います。
花の少ない冬に、景色を華やかにしてくれる椿を仰ぐと、
花の向こうに山が見えました。
天辺とは、椿の梢でしょう。
そこから、雪に覆われた高嶺が見え、
それは、日が差せば銀色に輝いたことでしょう。
「冬椿」の季語が生かされ、遠嶺の冠雪が十分に目に浮かびます。
冠雪の山に赤い椿は、清楚であり、強さがあり、
近寄りがたい美しさを感じたことでしょう。
「近江逍遥」16句の最後を飾るにふさわしい、
見事な作品です。